頭の中にあるチェックシートの枠組みの形を作っているのがマインドセットです。
それが解釈全体を一定の方向に導いていきます。
マインドセットが硬直していると、内なる声は自分や他人の品定めばかりするようになります。
「これは私が敗北者という事だ」
「これは私が皆よりも優れているという事だ」
「これは僕が悪い夫だという事だ」
「これはパートナーが身勝手な人間だという事だ」
といった具合です。
硬直マインドセットの人が、受け取った情報をどのように解釈するかと言うと、どんな情報に対しても逐一、極端な評価を下します。
良い事が起こると、過度にポジティブなレッテルを貼ってしまうし、逆に、悪い事が起こると、過度にネガティブなレッテルを貼ってしまうのです。
しなやかなマインドセットの人も、身に起こる事を絶えずモニタリングしている点に変わりはないですが、内なる対話で問題にするのは、そのような自分や他人の評価ではありません。
情報がポジティブなものか、ネガティブなものかという事も敏感に捉えてはいますが、関心の中心はあくまでも学習や建設的行動に向けられています。
この体験から何を学びとる事ができるのか。
どうすれば自分を向上させる事ができるのか。
どんな風に手助けをしたらパートナーがもっと良くなってくれるか、などです。
認知療法の基本は、極端な判断をしないで、穏当な考え方ができるように導いていく事にあります。
例えば、試験の出来が悪かった人が、「私は頭が悪いんだ」と結論に合うような出来事や、結論に反するような出来事を1つ1つ探していくのです。
以前に私はこんな事もしたっけ、あんな事もしたっけと、自分の優れた面をたくさん思い出した人は、「私はそれほど無能ではないのかもしれない」と思うようになります。
頭が悪いわけではないのに、なぜ試験の出来が悪かったのかについても考えるように仕向けていけば、益々前向きな考え方ができるようになります。
そして、今述べたような事を自分でできるようになれば、今後、ネガティブな判断を下しそうになった時、自分でそれを修正して、落ち込まずに済むようになります。
このように、事実に即した穏当な判断ができるように援助するのが認知療法です。
しかし、硬直マインドセットと品定めの世界に陥っている限り、その人を認知療法で救い出す事はできません。
なぜかと言うと、その人の根底にある大前提にある「人間の資質は変えようがない」というのが変わらないからです。
言い換えると、人の品定めの世界から連れ出して、成長を目指す世界へと導いていく力は、認知療法そのものには存在しないのです。