「あなたのこと、信じていたのに!」
そんなことを言われたことがある人も、言ってしまったことがある人も、いると思います。
この「信じる」というのは、一方的な想いである場合がほとんどです。
例えば、男性から「一生大切にする」と言われて結婚したのに、結婚後は「釣った魚に餌をやらない」状態で蔑ろにされている女性が、業を煮やして怒り出す。
すると男性は「君を大切にするために、仕事を頑張っているんだ」と言い返す。
それに対して「私が考える『大切にする』というのは、1日に1回は電話してくれるとか、月に1度は外食やデートに行ったりすることよ」などと言う。
これは、「大切にする」の定義が、2人の間でズレでしまったことが原因です。
恋愛に限らず、人間関係においては、誰しもが必ず相手に何かしらの期待をしているものです。
それぞれが、それぞれに期待をしていることがあるのですが、「実はそこがズレていた!」ということが露見した時に、信頼関係は崩れてしまいます。
また、期待していたことと違うものを返された時にも、崩れてしまうものです。
「そんなつもりじゃなかった」といった状態です。
お互いの「期待」があって、それに応えることを続けていくと、自然と「信頼関係」が生まれますが、その期待がそもそもズレていると、信頼関係というのは生じません。
これが途中からズレると「裏切られた」となるわけです。
ちなみに、この「期待」は、それまでにかけたコストが高ければ高いほど高まります。
そして、その高まった期待を毎回上回ることは、現実的にはよっぽどお互いがケアをしないと難しいので、「信頼関係が深ければ深いほど」裏切られたと感じることが増えるようになります。
結婚式が豪華であればあるほど、愛し合っていれば愛し合っているほど、美男美女であればあるほど、理論上裏切られたと感じやすくなります。
信頼関係が揺らぐ、もしくはなくなると、せっかくそれまで育っていた能力を削いでしまうことになりかねません。
信頼関係というのは、能力を発揮するためにも、非常に大切なものです。
「裏切り」というと、反目し合った敵対関係の中で生じたドロドロの状態、のようなことを想像しがちなのですが、そんな修羅場の状況ばかりではありません。
実際の社会においては、もっと”小規模な”裏切りがほとんどではないでしょうか。
しかし、小さい分、反対に裏切りと感じることが多いかもしれません。
裏切った方は「そんなつもりはなかった」「傷つけるつもりはなかった」くらいのことで、決して誰かを貶めたり、背中から斬りつけたりするようなことではなく、何をそんな大げさな、という認識なのです。
しかし、裏切られた側としては、「配属先が志望と違った」「働き始めて2年くらい経ったら大きな昇給があると言われたのに、2年経ってもまだない」「昔してくれたことをしてくれなくなった」など、期待に反することが起きた時に、「裏切り」という言葉で攻撃したくなるのです。
誰かを成長させるためには、お互いの期待がどういうものなのかを明確に定義しておかないと、長時間にわたるパートナーシップというのは組めません。
お互いがずっと成長し続けるには、「長期間」「安定したパートナーシップ」を組むことが大事なので、ちょっとしたズレも無いよう、事あるごとにしっかりとすり合わしておく必要があります。
次は何をやるのか?
今週の目標は何か?
など、本当にしつこく、嫌がらせのように、コミュニケーションを取るようにします。
そうすることで、自分たちが今している行動が何のためのものなのかが、明確になるのです。
コミュニケーションを取って、何をやるのかを確認すると、ある種の約束が自動的に生まれます。
期待を明確に定義し合った時に、お互いが約束で繋がることになります。
この約束は、上の立場の人も、必ず守らなければいけません。
この約束を、ビジネス用語で「コミットメント」と言います。
期限内に、確実に達成する”数字の”約束です。
相手を信頼できて、相手から信頼されていると感じられるところでなら、人は存分に、その能力を発揮できます。
お互いの「定義」がズレないよう、日々のコミュニケーションを大事にして下さい。