正論を言う人は、正義感が強い人です。
こういう人は概して真面目で、優秀です。
だから、例えば会社組織に矛盾があると、我慢ができません。
しかし、企業というものは、どこかに矛盾や非効率を持っているものです。
それが未解決のまま放っておかれているのは、必要悪であるか、解決にエネルギーを割くより放置した方が楽であるか、実害が少ないと判断されているためです。
あるいは創業者が作った仕組みで、歴史的にもすぐには変えられない、というケースもあると思います。
もちろん、不正や違法行為を見逃して良いという事ではありません。
顧客や会社に明らかな損害を与えるものは今すぐ修正する必要がありますが、納得できない不条理や不合理、無駄なプロセスや文化は多くの組織に少なからず存在します。
「うちの会社は時代遅れ」
「こんなのがまかり通る組織は絶対におかしい」
そういった事を言う人は、会社には鬱陶しく映り、結果として「あの人は面倒くさい人」という評価になりやすいです。
そんな事は周囲も百も承知で、わざわざ言い立ててもそうしようもないのに・・・というわけです。
反対に、チャンスを手にする人は、組織には理不尽さや矛盾がある事を受け入れます。
会社と喧嘩しても無駄だと分かっているので、自分はその中でどう行動するべきかを考えます。
「どうしてもこの問題は解決しなければならない」と思った時は、客観的かつ周囲を慮った言い方をします。
例えば、「そのやり方には、これらの問題が指摘されているようです。試しに、〇〇のような方法を取り入れてみてはいかがでしょうか?」という感じです。
それでもダメなら、上司が納得するような根拠・方法・成果をまとめて提案書として提出するとか、自らやってみて実績を出して、自分の主張の正しさを証明した後で会社への説得を試みます。
これはある不動産会社の話です。
ある販売チームが成績不振で、もし予算達成できなければ次のボーナスは無い、と会社から言われました。
危機感を持ったメンバーは、全員で集客の為の高額な勉強会に参加して、集客方法を学びました。
自分たちで無料セミナーを開催し、そのセミナーをビデオ撮影して動画を作る。
ウェブサイト上やDMで、メールアドレスを登録した人にその動画を無料でプレゼントするというキャンペーンを打つ。
集まったメールアドレス宛に、再び無料セミナーや無料相談会を告知する、というものです。
勉強会やセミナー開催などの費用は、チームの全員が分担して自腹で捻出したそうです。
予算が未達なので、会社にはとても請求できなかったから、との事です。
そして半年後、チームの売上は急激にアップして営業部全体でもトップの成績となり、ボーナスはゼロどころか増額支給となりました。
当然、会社もそのチームの激変ぶりを不思議に思い、事情を尋ね、裏側を知る事になります。
そして、その取り組みと成果を評価した会社は、これまでチームで出し合っていた費用を全額負担してくれるようになったそうです。
「変えろ」と言うだけなら誰でもできます。
でも、行動が伴わなければ、外野の無責任発言でしかありません。
「言うだけ番長」は、「なら、お前がやれ」と言われると腰が引けます。
目上の人からは、そういう姿勢を見透かされるのです。
だから、応援してもらえないし、引き上げてももらえません。
それよりも、自ら動いて結果を出す。
「こういう仕組みが必要」と思うのであれば、まず自分でやってみる。
そこで出た結果が何よりの説得材料となります。
そうすれば、以上の例のように、ボーナスを出さないと言っていた会社だって変わります。
自分の思う通りに組織を動かせる可能性もあります。
つまり、最初にすべき事は、会社に変革を迫る事ではなく、自らを変革させる事です。
正論を実践して結果を出す事なのです。