会社では、年間の経営計画に基づいて月次計画が決定されます。
そして、月ごとに達成すべき目標は各部署に落とし込まれます。
製造部、営業部、広報部など、各部署に通達された目標は、部門長のもとで各課へと割り振られ、最後に個人の目標が決定されます。
上に行く人は早い段階から、こうした組織の論理をよく理解し、意識しながら行動しています。
個々の社員が自分の目標を達成する事はもちろん重要です。
しかし、まずは会社の計画ありきです。
そこからどんどん落とし込まれていって、部長がもっとも重視する数字は部の目標数字、課長は課の数字です。
だから、自分の目標だけ達成できればいいというわけではなく、常に課の数字、部の数字、そして会社の数字まで視野を広げ、自分がなすべき事を考える・・・こうした習慣が早くから身についているのです。
上司の指示に素直に従い、周りが働きやすい雰囲気をつくってくれる。
後輩の相談に乗ったり、時には手厳しいアドバイスもする。
精神的なケアも忘れない。
努力をする姿勢を忘れず、どんな仕事にも手を抜かない。
いつも丁寧に仕事をするので、お客様や周囲から頼られる。
こうした働き方は、自分の成果だけではなく、組織全体に目を配り、貢献しようという視点がなければできません。
上司、同僚、そして後輩たちも、こうした「成果の出し方」までしっかりと見ています。
見ていないようで見ています。
そして、将来、誰がリーダーになって組織をまとめていくのか、実に早い段階から選別を行っているのです。
純粋に個人の成績の身を比較した場合、実務能力で100点の人よりも、たとえ実務能力が70点だったとしても組織への貢献度が高い人の方が評価されやすいのです。
抜群の結果を出している人が、「そこそこの昇進で終わり」というケースが多いのはこのためです。
上の地位になればなるほど業務の範囲は広がっていきます。
いつまでも自分の業務に留まって、仕事をしていられるわけではありません。
部下が配属されれば、業務の指示、チェックといったマネジメント業務が加わります。
部下の業務が基準に満たない場合は、自分の時間を削り、代わりに行うケースも出てくると思います。
もちろん、自分の業務は別にあります。
課長、部長と地位が上がっていくごとに、組織内の課題を自ら発見し、新たな業務の開拓も行っていく必要があります。
それにともない人員の配置、育成、組織体制の確立も上の人の仕事です。
昇進させるという事は、将来的にそういう職務を任せる事が前提です。
したがって、どんなに成果を出したとしても、「自分で決めた範囲外の事をやらない」という人を、会社は評価しないのです。
こうした人が、組織の為に献身的に働いたり、新たな課題を見つけて組織を活性化させるという事は「とうてい無理」と判断します。
会社には、同じくらいの実力の人が多数集まっています。
1人だけ飛び抜けているというケースはそれほど多くないですし、著しく劣る人たちが集まる事もありません。
常時70点以上の成果を上げていれば、集団内でそれほど大きな差はつかないのです。
それに対して、組織になった時に生まれる成果は、リーダー次第でかなり大きくする事ができます。
だからこそ、会社は「組織の利益を、より大きくできる人」を評価します。
これが、上に行く人の条件なのです。
もしあなたが、自分は一握りの天才ではないと感じていたとしても、そこに劣等感を抱く必要はありません。
単純な個人の成果競争で、全てが決まるわけではないからです。
会社にとって有能な人材、組織が認める人材の質は、もっと幅広い視点で評価されています。
こうした事実を、できるだけ早い段階でしっかりと認識していれば、業務の取り組み方にも大きな変化が現れてくるはずです。