「自分で覚えておかなくても、スマホに保存してあるから大丈夫」
パソコンやスマホのような便利なツールが身近にある私達は、そう思ってしまいがちです。
でも、それは本当でしょうか?
実際、便利な社会で生きる私達は、何かを自分の頭で覚えておかなければならない状況が激減しています。
例えば、昔は親戚や仲の良い友人の電話番号は当然のように覚えていたと思います。
年賀状を毎年手書きしていた時は、何回もやり取りするうちに相手の住所を覚えてしまう事もあったと思います。
ところが最近では、友人や知人、仕事の取引先など、必要な連絡先はスマホやパソコンで管理するのが主流になりました。
検索すればすぐに出てきますし、コピー&ペーストができるのでいちいち手入力する必要もありません。
便利なうえにミスも減り、効率的になりました。
更に、分からない事があれば、インターネットで簡単に調べられます。
単語の意味はもちろん、人物の名前や歴史的な出来事だって、その分野に詳しい人に聞いたり百科事典や本で調べたりといった膨大な手間と時間をかけなくても、それらしい答えが手に入るのです。
しかも、わからなかったものが何か正確に思い出せなくても、関係のある単語をいくつかうち込めば情報に辿り着けます。
テクノロジーは加速度的に進歩を続けており、2030年にはAIが人間を超えるという説を唱える人や、人間に変わってAIが社会を運営するようになると予測する人もいるほどです。
私個人としては、2030年ではまだAIが人間にとって代わる事はないと思うのの、そう遠くない将来、AIがさまざまなところで人々の生活を助けるようになる事は間違いないと思っています。
では、これからはそんな便利なインターネットやAIに頼って、自分の頭ではたいして記憶せずに生きていけるのでしょうか?
これから大人になっていく子供たちは、記憶する事は機械に任せて、自分は漢字や英単語、数学の公式や化学反応式を覚える必要はないのでしょうか?
その答えは違うと思います。
なぜなら、どんな時代が来たとしても、基礎的な知識、つまり記憶を通して自分のものにした知識がなければ、情報を活用する事ができないからです。
たとえ知らない単語を検索できたとしても、検索して得られた情報を解釈し、利用するには知識の土台がいるのです。
たとえば、「DX」という言葉の意味を知りたい場合、当たり前の事ですが、まず「DX」という言葉自体を覚えて、文字あるいは音声で入力できなければ検索できません。
検索すると、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉の略である事はもちろん、その言葉の意味する事や具体的な使用例もわかります。
けれども、自分の仕事でどのように応用できるかについては、検索結果が教えてくれるのは限りません。
検索する事によって、瞬間的に多くの情報にアクセスできるかもしれませんが、それを理解して活用する、つまり自分の血肉となるまで落とし込まなければ、情報が自分の表面を通り過ぎていくだけに過ぎないのです。